特定非営利活動法人

第1回現地観察会 甲府盆地西縁の形成史観察会
        2009年11月29日 当NPOとNPOやまなし自然クラブの共催で実施しました。


・観察ポイントと参加者の皆さん
拡大図はこちら

・観察ポイント1
 八ヶ岳獅子岩駐車場からの八ヶ岳とフォッサマグナの展望

・観察ポイント2
 韮崎市下円井の逆断層露頭の見学

・観察ポイント3
 八ヶ岳大崩落により形成された七里岩が一旦途切れる韮崎観音
付近の崖の観察

・観察ポイント4
 御勅使川(みだいがわ)扇状地と石積出(いしつみだし)の見学


参加者の皆さんです。

今回の観察会は当NPOのメンバー
が7名、NPOやまなし自然クラブのメ
ンバーが16名の計23名でした。

・観察ポイント1 ;八ヶ岳獅子岩駐車場からの”フォッサマグナ”展望

朝9時頃に八ヶ岳獅子岩駐車場
に到着。なんと気温は1度。予想
していなかった寒さに皆さんちょっ
とびっくりです。

ドイツの地質学者ナウマンが1875
年に”フォッサマグナ”を着想した
とされる眺望はガスが立ち込めて
いて見ることができませんでし
た。残念!!

当NPOの輿水さんが糸魚川ー静
岡構造線やフォッサマグナについ
て説明をしました。

駐車場には説明文が設置されて
います。


説明文中のナウマン博士の紀行文
にあるように、私たちが普段何気なく
眺めている風景も、ナウマン博士に
は「自分が著しく奇妙な地形を眼前
にしていることを十分に意識してい
た」となるわけですね。さすがナウマン
博士!!

・観察ポイント2 ; 韮崎市下円井(しもつぶらい)の逆断層の見学
この断層は糸魚川ー静岡構造線に沿った派生的な断層とされているようです。
矢印の線上が断層境界です。
地質学用語で「スラスト」と呼ばれる低角度逆断層です。逆断層とは横方向の圧縮の力によって、断層の上側の地盤が下側の地盤に乗り上げるような形で変位する断層です。
ですから、古い地層が新しい地層の上に乗り上げるということが起こるわけです。

この写真では約2万年前に堆積した段丘堆積物(砂礫層)の上に約1500万年前の石英閃緑岩が乗り上げています。
・断層の近影
ハンマーのある位置より下側が段丘堆積物で上側が石英閃緑岩です。

境界付近は変位することでもまれているので、段丘砂礫に混じって石英閃緑岩の角張った岩塊も混じっているようです。

下円井逆断層の説明が書かれた看板が設置されています。
1941年に東大の先生によって発見されたと書いてあります。

この逆断層は、1875年にナウマン博士が着想したホォッサマグナの証拠のひとつと言えるでしょう。ナウマン博士に見せてあげたかった!!

                     
下円井逆断層のでき方を説明す
る看板も立っていました。


なるほど、なるほど。こうやって断
層ができたと言うわけですね。


ところで、この絵の中で更新世中
期の絵は、更新世後期に断層が
動く前の状態を示した絵なので、
石英閃緑岩中の破断(断層)は砂
礫層の中まで続いていない絵に
したほうが正しいし、わかりやす
いですね。また、一連の絵の砂礫
層は、上二つの絵では更新世中
期(78万〜13万年前)に堆積した
砂礫層ですが、現代の絵では第
四紀段丘砂礫層(約2万年前)と
なっています。この絵のままでは
砂礫層ができた年代が矛盾する
ことになるので、もう少し説明があ
った方がよいですね

・観察ポイント3 ; 八ヶ岳の岩屑流 七里岩が途絶える地点の見学

七里岩(しちりいわ)は、八ヶ岳の噴出物や山体の一部がなだれのように流れて形成された台地の縁の崖のことで約30km続くことから七里岩と名づけられています。

この写真は七里岩の一部の崖を撮影したものです。こういった崖が約30km延々と続いているわけですね。高さは高い所では100mほどもあるそうです。

それにしても八ヶ岳火山の噴出物がこんなに遠くまで流されてくるとは、自然の力というのは計り知れないものがありますね。

この延々と続く七里岩が、韮崎駅付近で一旦途絶えてしまいます(写真の中央に見える崖が右端の所でなくなっています)。一旦と書いたのは、この南の甲府盆地の地下40mのところに七里岩の続きの部分が見つかったそうです。どうしてこのような事が起こるのか?というのがこの日の観察会での問いかけでした。どうも七里岩を切り離すような断層のような存在を考えなければ話が通りませんね、ということのようです。

・観察ポイント4 ; 御勅使川(みだいがわ)扇状地の見学

拡大図はこちら

御勅使川は南アルプスを背後に抱く
河川で山から平野に出るあたりで扇
状地(山から運ばれた土砂が山地
の出口で扇を拡げたように堆積する
地形)が形成せれています。

南アルプスは今も活発に隆起を続
けている山ということで、山から供給
される土砂の量も多いことが伺えま
す。扇状地という地形は、繰り返さ
れる洪水によって少しずつ成長して
いく地形とも言えるわけですが、そこ
に住む人間にとっては洪水は困り者
ですよね。古くからの洪水対策として
「信玄堤」は有名ですが、この扇状
地にも石積出(いしつみだし)と呼ば
れる堤が国指定の史跡として残され
ています。

これがその石積出(いしつみだし)と呼ばれる堤のひとつです。写真は「二番堤」と呼ばれるものです。

この堤は、現在の河川の堤防のように川の流れに平行に設置されているのではなく、一番堤から五番堤まで切れ切れに斜めに設置されています(上の図の拡大図で配置を見ることができます)。ここは山から平野に出る傾斜の変換点ですから、急勾配の山を下ってきた水の勢いをそぐのが一番の目的だったのではないかと想像されます。当時の人々の知恵ですね。

・晩秋の風景も楽しみました。

清里の清泉寮から望む八ヶ岳。

昼ごろにはすっかり天気もよくなり八ヶ岳もくっきりきれいに見えました。

紅葉もきれいでした。

山は紅葉のまっさかりでした。
今回は地形の観察会でしたが、美しい紅葉を楽しめるのもこうした観察会の魅力のひとつですね。

「これで温泉付きだったらもう言うことありません」という話が参加者の一部から出たとか出ないとか・・・。
                                                                          文責(瀬田)
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