第3回現地観察会 新倉断層(早川町):糸魚川静岡構造線の断層の見学

 フォッサマグナ西縁の形成史観察会 −早川町新倉の大断層に触れる旅− を開催しました。

日 時:平成22年10月23日(土)

コース:新倉断層露頭の観察−硯匠庵(雨畑硯)の見学と周辺の粘板岩露頭の観察−早川橋付近の鮮新世初期の地層と貝化石の観察

参加者:17名



新倉の糸魚川−静岡構造線(断層露頭)の観察。

フォッサマグナの西端を限る糸魚川−静岡構造線の露頭(次の写真の説明を参照)を観察しながらその形成過程などについて学びました。

新倉の断層露頭は国の天然記念物に指定されており、左の石碑には次のように解説されている。「糸魚川−静岡構造線、新潟県糸魚川市から長野県諏訪市、山梨県早川町を経て静岡県に達する。日本列島中央部を横断し、東北日本と西南日本を分ける延長250kmにも及ぶ大断層である。ナウマン(H.E.Nauman 1854°1927)によりフォッサマグナ(Fossa Magna=大きな溝)と名付けられた地域の西側の境界を画する断層である。山梨県早川町新倉の内河内川左岸には、糸魚川ー静岡構造線の逆断層が見事に露出している。断層の西側は先新第三系瀬戸川層群の黒色粘板岩、東側は、新第三系中新統の凝灰岩類からなり、西側の古い地層が東側の新しい地層の上にのし上がっているのが明瞭である。わが国でも第一級の断層である糸魚川−静岡構造線が典型的に見られる場所として貴重である。(指定、平成13年8月13日、文部科学省、山梨県教育委員会、早川町教育委員会)」


新倉の断層露頭の1kmほど北ではリニア新幹線の南アルプスを貫くトンネルの試掘調査が行われている(現場は立ち入り禁止)。

硯匠庵(雨畑硯)の見学。雨畑硯は700余年の歴史があり、中国の端渓硯にも比肩し得るその質感ときめ細かい肌ざわり、墨のあたりと墨おりにすぐれた日本を代表する和硯のひとつとして、昔より多くの文人墨客に愛用されてきました。



雨畑硯の原石は瀬戸川層群(5500万年〜2500万年前)の粘板岩で、原石としてふさわしい部分を坑道から掘り出して硯に利用されてきた。

瀬戸川層群(粘板岩)の露頭観察。瀬戸川層群の粘板岩のうちでも硯の原石として利用できる粘板岩の分布は限られている。


早川の河岸に露出する前期鮮新世(500万年〜300万年前)の曙礫岩層(礫岩・砂岩・泥岩互層)の観察。礫岩の礫は、赤石山地や巨摩山地から運ばれてきた砂岩、粘板岩、花崗岩、安山岩などからなり、前期鮮新世の頃にはこれらの山地が礫を供給するほど隆起していたことを示す。

曙礫岩層は一部に海に生息していた二枚貝や巻貝の貝化石(白色部)を含む海成層からなる。

(文責 小村)

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